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どうして人と繋がりたくなるのだろう。「未来をはじめる『人と一緒にいること』の政治学」宇野重規

久しぶりに行ったジュンク堂書店で、いろんな本を眺めてこの本を見つけました。 

 

未来をはじめる: 「人と一緒にいること」の政治学

最近、「人と会話したり、協力して何か新しいことに取り組みたい」という気持ちがふつふつと湧いてきているのに、一方で「でも、人と一緒に何かするのって、面倒なこと多いんだよなーーー」という思いもあったりで。

 

この本の表紙を見かけたとき、サブタイトルに「人と一緒にいること」の政治学、とあるのにピンときました。サブタイトルって大事!

 

著者の宇野さんはもちろん、政治学、というのもピンとこなかったけど、ぱらっと読んだ感じだと、高校生に向けた講義が元にされているだけに、身近な話題を取り上げていたり、文体も読みやすい。結局Kindleで購入しました。

 

 私たちは3人の哲学者の思考の枠の中でものを考えている

 

この本で私が一番面白く読んだのは、ルソー、カント、ヘーゲルと言う有名な3人の哲学者の考えをとてもわかりやすく、近所のおじさんみたいに親しみやすく紹介している部分。それぞれの代表作に何度か挑戦したことあるけど、やっぱり難しいので。

宇野さんは、ルソーがお気に入りのようです、近くにこんな人がいたら困っちゃう、というわりには。笑

 

ルソーの考え

人間が好きで一緒にいたいけど、自分は自由でいたい、それを曲げたくはない、両立できるはず。社会の共通の意思、「一般意志」を目指す。

カントの考え

ルソーの思想の中でも、自分のことは自分で決めたい、自分のボスでありたいと言う部分を重視して、自律を大切にする。

ヘーゲルの考え

ルソーやカントの思想を発展。人間は一人で閉じこもっていてはダメで、矛盾だらけの社会で、少しずつ自由であることを学び、成長していくしかない。それでも他の人と一緒に社会を作っていきたい。

 

この3人の哲学者の中で、どの考えに最も共感するか??

講義の中では、多数の高校生がヘーゲルの考えを支持、確かに日本人は一番ヘーゲルの考えが好きらしいです。私も少し前までカント寄りだったけど、今はヘーゲルの考えに寄ってます。

 

やっぱり、他の人と何かをしたい

 

この本の感想をまとめようと思って下書きを保存したタイミングで、家族でキャンプに行きました。我が家はキャンプが好きで結構行きます。キャンプを始めるようになったきっかけは、保育園のお父さんお母さんたちの集まり。5、6組の家族が集まって、ワイワイと20−30人でキャンプをする。

子供たちはもちろん、親たちもいろいろな活動をする中で会話が弾んでとても楽しい。その反面、めんどくさいことも。本当に小さいことなんだけど。

あまり人気のない料理があったら、「これもおいしいね!どうやって作ったの?」とフォロー入れる気遣いとか、キャンプ道具の良し悪しをなんとなく比較し合ういやらしさとか、温泉入る?入らない?みたいな生活スタイルのちょっとした違いとか、疲れて一人で過ごしていると気遣われるとか、盛り上がった夜の翌朝感じる照れ臭さというか気まずさとか…

団体キャンプを何回もやって、そういうわずらわしさや子どもの卒園も重なって、最近はファミリーキャンプ一辺倒、団体キャンプには参加していませんでした。

 

今回も家族でキャンプに出かけたところ、受付でバッタリ昔のキャンプ仲間の家族に遭遇。先方も家族単体で来ていて、なんとなく隣にテントを張って、一緒にキャンプをすることに。

お互い単体のつもりで来ていたから、他の人向けに用意した食材もないし、子供たちの遊び道具もない。それでも、単体では感じられなかった「違いから生まれる豊かさ」を家族全員が肌で感じて、今年一番印象に残るキャンプになりました。

4人家族と4人家族が1日を一緒に過ごしたっていうだけでも、小さな小さな「政治」ごとだよな、と感じたのです。

 

「人間が生まれてきたのは始めるためである」

 

最後の講義で、宇野さんが尊敬する女性思想家としてハンナ・アーレントが紹介されています。

 

みなさんは、自由というと、制約や拘束がなく、自分で好きなことができることだと思っているかもしれません。でも、アーレントに言わせれば、それは違います。彼女のキーワードは「活動」でした。活動とは、他の人と言葉を交わし、共に何かをすることです。もしそのような活動がなければ、あなたはいつまでも一人のままです。一人で孤立することが自由ではありません。むしろ他の人に声をかけ、共に何かをするとき、むしろ人は自由を感じるのです。独特な定義ですね。

 

誰かと一緒に何かをする前に、だいたい私はいつも「面倒だ」と思ってしまうタイプですが、終わって振り返ってみたら、「やー楽しかったーーー!」っていうことがとても多い。今はその自分の思考の癖を知っているから、多少面倒だと思ってもチャレンジすることができます。それにしても、事後のあの「楽しかった」は、なんとも言えない喜びなんだよなー、とモヤモヤしていましたが、アーレント流に言うとそれは「自由」。妙にしっくり、腹落ちしました。

 

 

難しい哲学者や考え方をわかりやすく講義してくださった宇野さん、書籍化してくださった出版社や関係者に感謝です。

また、この本はおすすめ本をたくさん紹介してくれています。この本のおかげで、読みたい本が5−6冊出てきてしまいました… 

人間の条件 (ちくま学芸文庫)

抽象的な言葉がずらずらと並ぶので、しっかり意識を向けないと読めないけど、それだけに深く深く考えることができます。まだ読んでる最中。

 

他に、多数決を疑う 社会的選択理論とは何か (岩波新書)Kindleで買って読んでます。